これからの法改正の動き
フリーランスとして働く人が増えるなか、支払いの遅延や一方的な仕事内容の変更などのトラブルも増加しています。
そこで政府は「フリーランスに係る取引適正化のための法制度の方向性」を公表し、事業者がフリーランスに業務委託をする際の遵守事項等を定める方針を示しています。
(1)開始・終了に関する義務
フリーランスに対して業務委託を行なうときに、業務委託の内容、報酬額等を記載した書面の交付または電磁的記録の提供(メール等)を義務づけています。継続的に業務委託を行なう場合は、契約の期間、契約の終了事由、中途解除の費用等の事項の記載を義務づけています。
契約を中途解除するときや更新をしないときは原則として中途解除日または契約期間満了日の30日前までの予告を義務づけています。求めがあれば契約の終了理由を明らかにしなければならないともしています。
(2)募集に関する義務
不特定多数の者に対してフリーランスの募集に関する情報等を提供する場合には、その情報等を正確 ・最新の内容に保ち、虚偽の表示・誤解を生じさせる表示をしてはならないとしています。
募集に応じたフリーランスに対しては、前述の事項の明示を義務づけ、明示した事項と異なる内容で業務委託をする場合はその旨を説明しなければならないとしています。
(3)報酬の支払いに関する義務
フリーランスに対し、役務等の提供を受けた日から60日以内の報酬の支払いを義務づけています。
(4)フリーランスと取引を行なう事業者の禁止行為
一定期間以上の継続的な業務委託に関し、事業者がフリーランスの責めに帰すべき理由のない受領拒否・報酬の減額・返品、通常相場に比べて著しく低い報酬の額を不当に定めること、正当な理由なく自己の指定する物の購入・役務の利用を強制することを禁止し、自己のために金銭・役務その他の経済上の利益を提供させること、フリーランスの責めに帰すべき理由なく給付の内容を変更したりやり直しをさせることによってフリーランスの利益を不当に害することを禁止しています。
(5)就業環境の整備
事業者に対し、フリーランスへのハラスメント対策、出産・育児・介護との両立への配慮を取り組むべき事項として求めています。
事業者が、前述の遵守事項に違反した場合、行政上の措置として助言、指導、勧告、公表、命令を行なうなどの履行確保措置を設け、また、事業者の違反をフリーランスが行政機関に申告できるようにするなど、取引環境の整備のために必要な措置を講じるとしています。
政府はパブリックコメントの結果を受けて、法案を早期に国会へ提出することを目指しています。
注目したい法改正の動向
- 老朽化マンション問題への対応
- 老朽化したマンションが急増するなかで、その管理や建替えを円滑化するための規制緩和が議論されています。葉梨康弘法務大臣は区分所有法制の見直しを法制審議会に諮問し、区分所有法制部会が新設されることになりました。
- 暗号資産を没収可能に
- 法制審議会刑事法(犯罪収益等の没収関係)部会が、不動産、動産、金銭債権以外も犯罪収益等として没収可能にする組織的犯罪処罰法の改正を求める要綱(骨子)を採択しました。仮想通貨などの暗号資産も犯罪収益等として没収できるようにするのがその狙いです。
- 食料安定供給のための法整備
- 世界的な食料情勢や気候変動などの今日的な課題に対応していくために、政府は制定から約20年が経過した食料・農業・農村基本法について、総合的な検証を行ない、見直しに向けた検討を開始しています。
- 悪質商法対策の強化
- 消費者庁に霊感商法等の悪質商法への対策検討会が設置されました。霊感商法や過度な寄附等に関して、消費者契約法改正や新法制定による被害者救済、また宗教法人法の解散命令請求のために所轄庁に報告を求め質問をする権限を機能させることなどについて議論が進んでいます。
出典・文責 ≫ 日本実業出版社・株式会社エヌ・ジェイ・ハイ・テック